現代は、人類がこれまで経験したことがないくらい「変化が早い時代」です。
10年前には想像もできなかった暮らしや働き方。
AIの進化もすさまじく、1年前と今では一変しています。
「現代人が1日で受け取る情報量は、江戸時代の人の一生分に相当する」というのはよく知られている話。
そんな激変する時代のなかにありながら、私たちの「身体」というハードウェアは、数万年前からほとんど変わっていません。
常にフル回転の「頭」と、変わらない「身体」。
その大きなギャップの中で、心が疲弊してしまうのは無理のない、自然なこと。
あなたが弱いわけでも、根性が足りないわけでもないのです。
技術の進歩した現代だからこそ、精神論よりも先に「身体」という確かな土台を整えるべき理由について、私の実体験を通してお話しします。
狩猟時代から変わらない、私たちの身体

生物学的には、 私たちの脳と身体は今もサバンナにいる。
人類は、数万年前の狩猟時代からほとんど変わっていない。
これは、「スマホ脳」や「運動脳」の著者として知られるアンデシュ・ハンセンが、繰り返し伝えているメッセージです。
私たちの暮らしは、100年前と現代ではまったく違います。
便利になり、効率化され、選択肢も増えました。
それでも、どこか満たされない感覚を抱く人が多いのはなぜでしょうか。
それは、私たちの身体が
「運動して、食べて、眠る」
という、生物としての本能を“幸せ”に感じるようにできているからです。
かつて私が囲碁に打ち込んでいた頃、活躍している人ほどジムに通うなど、意識的に身体を動かしていました。私自身も、適度に身体を動かして少しの疲労感があるときの方が、深く静かな集中ができたことを覚えています。
また、10代でプロゲーマーとして活躍している子に会ったときのこと。
彼はマウンテンバイクもプロ級で、「一晩中、東京から千葉まで自転車を漕ぎ続けた」という話を聞いたときは、とてもびっくりしました。
普段、ここまで身体を動かす必要性はありません。
けれど、脳のパフォーマンスを最大限引き出すためにも、「身体」という土台を整えるのが、いかに重要かは想像できると思います。
そして、その第一歩はとてもシンプル。
今ここにある、自分の身体の状態に気づくこと。
そこから、「自分が本当に求めているもの」が、少しずつ見えてきます。
ゲシュタルト療法のワークショップで見えた「身体からの気づき」

突然ですが「ゲシュタルト療法」というものをご存じでしょうか。
「今、ここ」にある身体感覚に意識を向けて、「何を感じているのか」に気づき、無意識と意識を統合していく心理療法です。
5年前、たまたま誘われて東京の1日ワークショップに参加する機会がありました。
相談や悩みの内容は、同居する親との関係性や昼ドラのようなドロドロな展開に悩む人など、なかなか重い人間関係の悩みが多い。でも、みんな「何とかしたい」という想いはあって、赤裸々に語っています。
正直「ゲシュタルト療法って何だろう?」レベルの何の知識もない状態で参加した私。
実践的なアプローチを受け、今、この瞬間の感覚にアクセスすることで、変わっていく身体を目のあたりにしました。
- 身体の硬さが抜けて、表情の雰囲気まで変わる人
- 自信なげに丸まっていた背中がシャンとして、軸が通った姿
感覚的なことなので言葉にするのは難しいのですが、
「心を変えよう」としなくても、身体から人は変わっていく。
参加者の表情や姿勢の変わりように、思わず見入ってしまいました。
気づき(Awareness)が、自分を取り戻すきっかけになる

ゲシュタルト療法には、自分を取り戻すための気づきを、大きく3つの領域にわけて考えます。
- 外部領域: 雨の音やご飯の匂いなど、五感で知覚できる外の世界
- 内部領域: 肩の凝りや喉の渇きなど、自分の内側で起きていること
- 中間領域: 過去の反省、未来への不安、こうあるべきといった思考
この3つのなかで、私たちがよく考えている領域は何でしょうか?
それは、3つ目の「中間領域」です。
そして、これが1番厄介でもあります。
生きていくなかで刷り込まれた価値観や思い込み。
失敗したらどうしようという未来への不安や、過去への執着。
生きていくなかで刷り込まれた「こうあるべき」という価値観や思い込み、思考のクセはここから生まれます。
「自分が何をしたいのかわからない」
「人間関係がうまくいかない」
そんな悩みがある人ほど、無意識の自分の思考に縛られてしまっているのかもしれません。
無意識ではどうしようもありませんが、気づくことができれば、何歳からでも人生は変えていけます。
今こそ、内なる自然と本能を味方につける

「人生に正解はない」と言われますが、先の見えない変化の激しい時代では、ますます未来の予測は難しくなっています。
そんな時代だからこそ、必要なのは、過去でも未来でもない「今、ここ」を感じる力。
自分の身体の声を聞いて、選んでいく力が試されています。
私は、この身体感覚を意識できるようになってから、未来への挑戦に迷いが少なくなりました。頭で考えた正解ではなく、身体が感じる心地よさや納得感を信じられるようになったからです。
「頭」で考えすぎて動けない人ほど、今の身体の状態を感じてみること。
それが、未来の自分のためになるかもしれません。


